屋根裏の散歩者

            夜の盗撮が忍び込んでくる夏のある日のこと

暗黒街で 偽造リトマス試験紙を 手に入れた僕は スタコラサッサ スタコラサッサ と アーケードの屋根の上を散歩する三毛猫を 「屋根裏の散歩者」に見立てて 自分を完全犯罪しようともくろんでいた

「読者の皆さんは もうお気づきでしょう」 と言う彼のインテリぶりに イライラした日もあった (僕だけが何も気づいていなかった……)

僕は 無差別より ある特定の個人を狙った犯罪のほうが 恐かったので 行きつけのファミリーマートをスルーして セブンイレブンに行くと見せかけて けっきょく セイユーに入った

2箱のコーンフレークではさんで ペディグリーチャムを恥ずかしそうに レジに出し さらにアドリブで キューピーマヨネーズ1/2を2つ買った (1/2+1/2で1だと 僕は心の中で ほくそ笑んでいた……)

エースコックの「豚キムチ」は 美味しすぎるので 罠だと気づいた

軽くデコピンして ニヤリと 勝ち誇ったように笑うと 僕をスクープして あとで僕の肖像権を「FBI心理分析官」に 高値で売ろうとしていた盗撮者は 興奮して 混乱して カメラの向きをグルグルかえた

僕は僕にフェイントをかけすぎて 本来の目的を忘れていた

僕は僕がフェイントにかかるのを 見るのが好きで いつもフェイントばかりかけていたので だんだん関係無い存在だとバレてしまって 空想もフェイント化していたのだ

しかし 「アーケードの屋根の上の三毛猫」は 確かに存在していた 「それは違うフェーズなんだ」と 村上春樹も言っている (phase…様相、局面、段階)

僕はその可愛い「屋根裏の散歩者」に 「ペディグリーチャム」1箱と 「キューピーマヨネーズ1/2」1つを援助し お礼に 僕の死角を盗撮してもらった

そして 「それもまた違うフェーズなんだ」と 声にだして言ってみた