こばん鮫

            平日の午後3時~4時の間は、プールに必ずこばん鮫がいる。

おそらく、排水溝から入ってきてプールで1時間ばかり過ごして、4時になるとまた排水溝から去っていくのだろう。 実際に排水溝から出入りしているところを見たわけではないが、他に考えようがないので、たぶんそうだろう。

不思議なことに、僕以外にこばん鮫の存在に気付いている人はいないようだ。 話す知り合いも居ないので、確かめようがないが。

ところで、こばん鮫は、最も速く泳いでいる人の腹にくっつく習性がある。 もちろん、それが背泳ぎの人である場合は、背中にくっつくことになるのだろうが…、僕はまだクロールで泳ぐ人の腹にくっついているのしか見たことがない。

僕は一時期、毎日のように挑戦していたのだけれど、まだ3回しか、こばん鮫にくっついてもらったことがない。 午後の3時から4時というと、ちょうど近くのオフィスの営業マンたちが、さぼって、ストレス発散にやって来る時間なので、とてもハイレベルな戦いになるのだ。

中でも1人、とんでもないスピードで、しかも1時間以上連続して泳ぐ人がいて…、その人が来ている日は、いつもはじめから、あきらめていた。 髭をはやした小太りのオジさんで、なんでこんな体で速く泳げるのかと、いつも不思議に思っていた。

最近は生活サイクルが変わって、夕方6時ごろから泳いでいるので、もうかれこれ1ヶ月近く、こばん鮫を見ていない。 また機会があったら挑戦してみたい。