水と空気の境界面上

            「プール」は、水で充たされた半球体と、空気で充たされた半球体とに分節された、ガラスの球体であった。

外は雪だった。 僕は、水と空気の境界面上を滑っていた。

クロールで滑っているとき、僕は水の世界に属しているのだと感じた。 白くてやわらかそうな雪のようなものが、吸い込まれるように、水の向こうのどこかに昇ってくのを見ていた。あるいは、降りていくのを見ていた。 エッシャーの騙絵を見るときのように、僕は、眼の観点をパタパタと変えて、世界が一瞬にして反転するのを面白がっていた。 穏やかな気分で、ゆったりとしていれば、人間は水の中でもだいじょうぶなのだと分かった。

背泳で滑っているとき、僕は空気の世界に属しているのだと感じた。 雪がどこからやって来るのか突きとめようと、ある一点を、集中して見つめていた。 すると、風景が絵画であるように思えてきた。漠然と全体を眺めているときは気づかなかったが、ディテールに意識を向けると、明らかに物質感が無いと分かった。 僕は、どこまでが物質で、どこからがフェイクなのか、その境界を確定しようとして、何度も視線を往復させた。

いつのまにか、雪が雨にかわっていた。 考え事をしていたので、気づかなかった。

僕は全身の力を抜いて、眼をつむった。 ゆったりとして、惰性で滑るのに任せていた。

もう、どちらの世界に属しているのか、分からなくなっていた。