水泳教室

            先週のことだが、スケジュールの都合でチャールズ・ブコウスキー先生が来れなくなったので、リチャード・ブローティガン先生が代わりに来た日があった。この2人はどちらもアメリカ人で、名前も微妙に似ているのだが、教え方というか、性格<!--more-->は、まったく正反対だ。

そして、僕はブローティガンさんの方が先生として、だんぜん優れていると思う。

ブローティガン先生の方がソフトなのだ。インテリなのだが、それをうまくユーモアにすり替えて話すので、ぜんぜん嫌みじゃない。ゴーグルがはずれないように飛び込む方法を、簡単な流体力学の話しをまじえて説明したり、プールに本物の鯉を5ひき放して観察させて、足の動きで前に進む原理を分からせたりと、とても工夫をこらした教え方をする。

それに対してブコウスキー先生は、プールサイドのデッキチェアーに腰掛けて酒を飲みながら、「つぎバタ足だけで5往復」とか、「つぎは飛び込み10本づつ」とか、ただメニューを伝えるだけだ。たまに気が向いたときに、ちょっとフォームを直したりするが、たいていはボーっと酒に酔った紅い顔で、窓の外を眺めている。

僕はブコウスキー先生の教室にもう半年以上も通い続けているが、その間に、技術的なことについても、精神的なことについても、何一つ教えてもらった覚えがない。

それでも僕は今も、ブコウスキー先生の教室に通い続けている。