腹をすかした建築家

            腹がへって眠れなかった。

冷蔵庫の中には、ドトール・アイスコーヒー(無糖、1リットル)が4パックと、丸かじりしてイビツな半分になったカマベール・チーズのかたまりと、もう酸化してしまっているはずの飲みかけの白ワインと……、そんなものしか入ってない。 Gパンをはいて、スニーカーをつっかけて、外に出た。 ファミリーマートの時計を外から見ると、3時5分だった。いつも5分遅れているから3時10分だと思った。 ブコウスキーの詩にでてくる、「腹をすかした建築家」というフレーズを思い出した。 ファミリーマートには入らなかった。 五日市街道を西に向かって、歩いて行った。サンロードに入らずに、そのまま進んだ。久しぶりに通るコースだ。 夜になると、この通りはいつも道路工事をしている。 寺の境内を覗き込むと、真っ暗だった。そして一番奥に、オレンジ色の明かりが灯いる。何度見てもブキミだ。 銀行通りに出て左に曲がった。 ここでも、工事をしている。 カラオケ屋の前の小径は、特に大がかりな工事をしていた。深い溝がアーケードの方まで掘られていた。 パルコまで来て、左に曲がった。 スケボー少年が6人くらいロンロンの入口の前で、輪になって座っていた。みんなスケボーを椅子がわりにして、座っていた。よく見ると、女の子が2人まじっていた。少し羨ましい気がした。高校生のころ、夜中に外出するなんて、考えたこともなかった。 富士そばに入ろうかと迷ったが、やめて、そのまま通りすぎた。 アーケードの前に来て、松屋の牛丼にしようかと思ったが、やはりやめた。 三菱銀行の前を通って、吉祥寺大通りに出た。 左に曲がった。 サラリーマンが携帯をかけながら、こっちに向かってきている。「もう、帰って寝ます」という声が聞き取れた。 近鉄の前で信号がちょうど赤になった。車なんか一台も通ってないのに、ずっと待ち続ける自分が嫌だった。 でも、すぐに肯定的に考え直した。こういう行為も無意識を介して相手にも伝わるんだ、というよなことを考えていた。 渡るとすぐに、手相の勉強をしている、というスーツの男が近寄って来た。 「いいです。ごめんなさい。……ごめんなさい。……嫌です。ごめんなさい。」と言って、拒否した。 不可解だ。 デニーズに入ろうと思っていたが、考え事をしているうちに、いつの間にか通り過ぎていたのでやめた。 ファミリーマートまで、戻って来た。 中に入って、真っ直ぐ弁当のコーナーに向かった。不味そうなのしか残ってなかった。雑誌のコーナーで、母親を殺した17才の少年の記事を読んで外に出た。 部屋に戻って、リンゴが2つあるのに気づいたが、もう食欲が無くなっていた。 今は、4時29分。 今、30分になった。窓の外が少し、明るくなっている。 まだ眠くない。