紙コップの女神様

            紙コップに描かれている女性は、微笑んでいる。

髪がが長くて、星の飾りのある王冠をかぶっている。 何かの女神様かな。 きっと優しいに違いない。

しばらく本を読んでいて、ふと紙コップに目を戻すと、女神様と目が合った。 僕を、にらみつけている。 冷酷そうな鋭い口角の笑顔で、両手に武器を持っている。 「もう逃げられないのよ」と、無音で、はっきりと伝えてくる。

僕は体をダミーにして、意識だけを逃がした。 モールの中をでたらめに飛びながら、どこが安全か必死に考えていた。 「安全な場所なんと何処にも無い」と少しづつ気づいていった。 とりあえず屋上に出ようと思った。 雨が降っていて、昼前なのにライトを着けている車も多い。

なるべく車がない奥の角まできて、壁のでっぱりに腰かけた。 急だけど、僕の人生はこれまでだと悟った。 柵の向こうで巨大な山が、活き活きとした深緑で、背景になっている。 ここで彼女を待つことにしよう。