旅、神様の代理として

ケンイチウジ

さらばでござる

せっしゃは、旅に出るでござる

どこまでも軽やかに

この足を使って

涙がでるような風景を

おしげもなく

高速で向こうへ

吹き飛ばしながら

灼熱と極寒と

光と闇と

眠くなるような幸福と

冷たい感動のような恐怖と

熱湯のような快楽と

生物の痕跡だけをたどって

カゲのように

原子の構成物のふりをして

進化論と黄金比と数列を司る

神様の代理として

螺旋を悪用して

太陽を吹きけそうとしていると

何かの誕生を

お祝いするついでに

白亜紀の音源が

光の加減でかすかに

聴こえてくる

 

泣きそうになるくらい、原型、宇宙

こころの中に

宇宙を感じる

この感覚が、おそらく原型なのだろう

あらゆる物理学

あらゆる哲学

あらゆる宗教

あらゆる物語

まだ大気圏から出たばかりのところを

ちょろちょろしているだけだ

もっと遠くに

もっと奥に

もっと深く

もっと奥に

いってみたい

戻れなくなるくらいに

恐くなって泣きそうになるくらいに

 

ザツな天使のオツゲ

ザツな天使が
わたしの耳のすぐ近くで
爆音で
ささやき続けてる

はやくちで
爆音で
ささやき続けてる

からだが
つめたくなって
すきとおっていく

原子になって
空気と
同じになって

音とわたしが
とてもよくまじって
ただようから

どこにでも行けて

宇宙のすべてに
みちて
みちてく

わたしの耳のすぐ近くで
宇宙のすみずみまで
爆音で
はやくちで
ささやき続ける

きっと何かの
オツゲ

とても大事な
オツゲ

こばんザメ

 赤ぼうしクラスの後のプールには、いつもこばんザメがいます。
 1コースの下のあなから入ってきて、1時間プールですごして、3時半になると、またあなから出ていくのです。
 あなから出はいりしているところは、まだ見たことがありませんが、たぶんそうだと思います。
 他に考えられません。

 わたしの他に、こばんザメに気づいている人はいないと思います。
 言っても信じてもらえそうにありませんし、へんな人だと思われるのもいやなので、まだだれにも話していません。
 わたしだけのひみつです。

 こばんザメは、一番速く泳いでいる人のおなかにくっつきます。
 こばんザメがすべてそうなのか、このこばんザメだけがそうなのかは分かりません。
 背泳ぎの人が一番速い時は、もちろん背中にくっつくことになるのだと思います。
 背泳ぎの人の背中にくっついているのは、まだ見たことがありません。

 こばんザメにくっつかれると、ヒヤっとして、こそぶったいです。
 でも、しばらくすると、だんだん気にならなくなってきて、ちょっとあたたかくなります。
 そして、体がかるくなって、手も足もくるくる回って、いつもよりスピードが出ます。

 わたしはこれまでに、3回しか、こばんザメにくっついてもらったことがありません。
 土曜日の午後は、大人の泳ぎのうまい人が多いからです。
 中でも1人、とんでもないスピードで、しかも1時間以上ずっと泳ぐ人がいて…、その人がいる日は、いつもはじめから、あきらめています。
 ヒゲをはやした、おなかの大きなオジさんで、なんでこんなおなかで速く泳げるのかと、いつもふしぎに思います。
 オジさんのおなかは丸いので、こばんザメはくっつきにくそうです。
 たまに、ポロっとはがれて、あわてておいついて、またくっついたりしています。

 このまえ黒ぼうしになって、曜日がかわったので、もう1ヶ月くらい、こばんザメにあっていません。

 また、こばんザメといっしょに泳ぎたいな。

練習問題

ただテキストを読むより、問題を解いている時の方が集中できる。

ごろっとした状態で、問題を解くことはできない。

問題を解く時は、無意識のうちに姿勢が良くなっている。

これを応用して、人生におけるだらっとした時期には、練習問題をやると良いのかもしれない。

倦怠期、五月病、モラトリアム、老後…

「1カ月後に奥さんがあなたに離婚届を渡す決心をしていると分かりました。奥さんとあなたの共通の友人が教えてくれました。奥さんが考え直すようにするために、あなたは何をしますか?」

「あなたの余命があと1年と分かりました。どうしますか?」

「半年後に会社が倒産すると分かりました。どんな準備をしますか?」

Raspberry Lover(ラズベリーラバー、秦 基博)について

短い時間で、長い物語が凝縮されて入ってくるようだ。

だとするとすごい情報量だ。

「さも 彼女だけが 童話の中にきるように」という出だしの部分で、たくさんの童話が、頭の中で検索され始める。

アダムとイブの禁断の果実?

白雪姫の毒入りりんご?

えっ、シンデレラが魔女だったの?

彼氏の目の前で僕に「一瞬 目配せして 微笑んだ」、あの魅惑的なお姫様は、どこの魔女だ?