1990~1999(20代)

Mについて

僕は、パルコ7Fの バックヤードにいた 換気用の小窓が 1つ穿たれていて 制御された街のネオンが 暗闇と調和していた 左耳の裏に、刺激を感じ始めた 肉眼では見えない 限りなく細い針だった じっとしていた 赤と青の暗闇が 冷たく 漂っていた 3本目が差し…

球体

球体の中は ひんやりしていた 古代の生態系が 守られていた 呼吸を 最小限に押さえたのだが やはり 侵入してきた 肺が熱をもちはじめて 古代のウイルスに 侵されつつあった 『Booy Trap/1998.1』

光の柱

光の柱は そのためにあるのかもしれなかった ハドリアヌスがしたように 僕も 柱の中に 立ってみた そして ハドリアヌスがしたように 裸になった 黄ばんだヘインズと 破れた501は きれいにたたんで 祭壇にのせた すり切れたアジダスは 柱の外に 揃えた 目…

ハドリアヌス

ハドリアヌスは ニッチに腰掛けていた 懐かしそうに 石の硬さを確かめていた 僕と彼と どっちの方が寂しいだろうか? 僕らは一言も喋らなかったが たしかに ふたりとも 球体の中にいた 『Booy Trap/1998.1』

パケット君とマネキンの指 (詩)

はじめての切ない思い断ちましたパケット君が運んでくれる 木漏れ日が乱反射するマネキンの指で綴った別れのメール

眠らない夜

内蔵がシビれて、グニャグニャたるんでいる。 身体がネイティブになってくる。 熱い。 幼児体験が動きだす。 ゴニョゴニョと右肩の上で ハイハイしている。 ヨチヨチしている。 遅い。 もっと速く。速く、速く! 彼女との薄暗い月夜のF棟屋上での アジア的…

微細な転機

怠惰な生活から いつの間にか少し 良い方向に気分が転がっていた という時の感じは ストン… と落差があって むしろ それまでの流れより下の流れに 移行した感じがあって ふぅ~ という感じで 心地よく 少し後退して 一度 とりまく空間が静止し しばらくして …

内部爆発

森の中のコーヒー屋。 雨が降っている。 暗い配色のしめった樹木が 内部爆発で破裂する ところを白昼夢のようにイメージした。 それは、 ある一匹のカブトムシが発明した 昆虫世界における 原子爆弾的なものであった。 コーヒーカップを 返却カウンターに も…

内部から

新しい細胞ができなくなる。 染色体が破壊されたのが原因らしい。 (胃の中に重い唾が溜まっていく) 白血球が急激に少なくなっていく。 治療方針が検討される。 白血球の型が合う人を探して採血して移す。 染色体は身体の設計図。 放射線が設計図を破壊する…

雪女と渡り廊下

彼は雪女に会ったことがある。 14才だった。 冬の満月の夜だった。 夢の中か、空想の中か、 現実の中だったのか…… 定かではない。 ただ、彼の記憶の中に、 雪女に会ったという 記録が確かにある。 彼と雪女は、学校の渡り廊下の、 ちょうど真ん中ですれ違…

電車とゾウ

先頭の車両に 首の長いゾウが乗っている。 臭いで分る。 運転士はムチで威嚇しながら どうにかこうにか走らせているようだ。 電車の中でタバコをすっている人を 初めて見た。 エナメルの紅い靴 汚れたコンバース 渋いスゥエード。

誰だ?

誰だ、誰だ、誰だ? そこに居るのは、誰だ? 紅い服を着ている。シャープな顔立ちをしている。 やっかいな存在だ。 僕を憎まないでください。 僕を上空から見透かさないでください。 温かく見守らないでください。 僕は逆境に慣れていないのです。 誰ですか…

窓辺で書く女 (1932年,油彩,画布)

美しい人は 分割して見なければならない 美しい幾何学が にじみ出てくる 幾何学が部屋中を満たすだろう 窓の外まで溢れだして 地球が 美しい 球体になった 空間は 再構成されていく

石ころについて

たとえば、この石ころは ぼくが今こうして拾い上げなければ 永遠に誰からも注意を払われることなく ただじっと、孤独に 消滅を待つだけだったのだ ぼくのように 世の中のあらゆる事物は 悲しい どんな物でも 一〇分も見つめていれば ある瞬間から (ぼくの経…

人生時間方程式

「生→成長→老化→死」 一般的に人間の時間は この式にしたがっている とする。 最初の→を 矢印① 2つめの→を 矢印② 3つめの→を 矢印③ とする。 僕は今 矢印②を流れていると感じる。 もはや純粋に 時間の流れ=成長 ではない。 少しづつ老化のニュアンスが 混…

深夜

深夜になると、人はいなくなり 街は広々している。 ぼく以外に誰もいない世界に来たようだ。 アーケードにも、公園にも誰もいない。 ジブリ美術館には、 ラピュタの兵士がとり残されている。 宇宙の果ての事を考えてしまう。 地球規模の映像をイメージしてし…

沼地の底の穴

二進数から十進数へと変換するようにして 明るい何かをよみがえらせて下さい。 オヤジの舌打ちと煙と電磁波が 僕の沼地の底に穴を開けようとしています。 寒い場所でブーツの女の人が 両手でホットコーヒーを持っている。 カーブする乳白色の模様の間から 熱…

視-線をたどって

僕に、まっすぐに向けられた視-線をたどって、彼女の意識空間へもぐり込む。意外に明るい、その狭くて広大な、重さのない何かの中で、僕は記憶装置を見つけるためにスタコラサッサ…スタコラサッサ…と飛びまわる。 分からない、まったく見当もつかない。養老…

山手線で夜

目をあけると横の 雑誌集めのオヤジさんが立ちあがる ところだった。 山手線で夜 目をつむっていたのだ。 川の流れる風景をキャッチしたので しばらくの間 集中していたのだ。

錯乱

これから一昼夜、僕は書き続けるつもりだ。断続的に。黒い粒子で埋め尽くされた際限のない広がりの中から。とりあえずは真夜中の散歩から。 (今、僕は太宰治が自殺したとされる、玉川上水沿いを延々と歩いている)この美しい人は、いったい誰なのだろう? …

ちょうど心臓の真上に

ボードレールの『悪の華』を コートの内ポケットの中に ちょうど心臓の真上に 忍ばせた虚ろな男は あなたの すぐ近くに居るのかもしれません 横断歩道で あなたと一瞬 眼が合った あの男は 「通りすがりの女」である あなたに 「おお 私が愛したはずの君」と…

記録してしまう

僕らは記録してしまう。 必死に 流されていかないように サランラップをねじって作った命綱を 脊髄の中ほどにひっつけて。 記録するんだ……。 サランラップは涙にぬれると 溶けてしまうんだよ ああ 向こう側の光がぼやけて 香港映画 のようになってる 水は蒸…

街が微妙に、変化している。

パルコが、ひとまわり 小さくなったような気がする。 ラオックスの隣は、つぼ八だったはずだが 白木屋になっている。 アーケードの中の映画館の入口が どうしても、見つからない。 ABCマートでALL STARの紺色をください と言うと ALL STAR に紺はありませ…

右から左へ

右から左へチカチカしながら上昇する音のイメージが聞こえる。あの移動の上に彼女が座っていると仮定してみよう。僕は素足でジャンプするカンガルーといっしょに、彼女の裏声の後を追った。太陽が眩しいからボランティア活動に参加して少し休もう。古本屋で…

移動式ピンポン玉

耳の中がちょっとづつ あ たたくなり 土で構成された地面から 紳士たちが 飛び出してくる 皿も割れるだろう ふちなしの黒い立方体からは子供たちが 生まれて みんなで僕の耳をふーふーするんだ ピアノが何かを始めそうだから 僕はキーボードに手を乗せて待っ…

暗闇の中の境界/ポップ機械/まったく

暗闇の中にも境界はあるのさ。 君の弱々しい音楽は、1辺が 3mくらいの立方体の中で行ったり 来たりしている。 ああ、イライラするよ。 僕の日々を比喩っているようじゃないか! 低音なのか高音なのか 判断がつかない音源から君の 幼児体験がチビチビと ト…

やわらかいレースの知性

やわらかいレースの知性が 目線をはずしたとしたら 僕は何と言ってか分からなくなるだろう 右に不吉な影があって 美しく 例のあの 未来を暗示している オミクジの裏にメッセージを書いて 僕は霊的な交信を試みる 僕は切なくて どんどん妖しい回路を増設して…

ぬるぬるしたハイテク空間

ぬるぬるしたハイテク空間だ。 洞窟の向こうには、冷たい、光の空間が 広がっている。 僕は今、バスケの練習着で、その 3次元迷路を俊敏に、 飛びまわっているのだが……。 なんだがここには、童話めいた雰囲気が ただよっている。 不吉な予感がする……。 1ト…

テクノ/妊婦の声

由緒ただしいミイラに、テクノを聴かせよう。 そして感想を アンケート用紙に書いてもらおう。 フリー解答で、率直に。 テクノの未来のために。 本の善し悪しを、 タイトルだけで判別できるようになった僕は、 神秘的なのだろう。 僕は出版社と取引をした。 …

サイホン式

動く家具が影を操作している。 水とスプーンが光を輝かせ、 バーテンダーが湯気を仕立てる。 そりゃ、貴婦人も訪れるだろう。 サイホンの上でまねき猫が 意味ありげに入り口を指さしている。 ポプラが天井まで届くとき 僕の声は一時的に機能しなくなる。 何…